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「教育に科学的根拠を」中室牧子先生講演より

数年前、「学力の経済学」という書籍に出会いました。何冊も読んできていた教育書の中でも大きな衝撃を受けた本であり、そのころ小学校教諭としてもやもやしていたことの答えのきっかけが書かれていたのをよく覚えています。

今回は秀英予備校さん主催の「教育に科学的根拠を」の講演会で中室先生が登壇されるということでぜひ聞きたいと思い、会場に足を運んでみました。多くの方が聞きに来ており、注目度の高さと、聞きに来ている人たちの意識の高さに驚きました。1時間30ほどの講演で、次から次へと研究の結果を紹介してくださったのでボリュームのある内容でした。

 

 「1億総評論家」

まずこの言葉でした。意味としては、日本人はほぼ全員が義務教育を受けており、教育というものを全員が経験している、そのため誰でも教育に対して何かしらの意見を持っており、話すことができるということです。

まさにその通りです。「昔は〜だった」「自分の経験では〜」という教育についての提言をよく耳にします。それも正しいのでしょうが、全員に当てはまらないというところがポイントです。中室先生のお話では、経済について話す時、必ずデータを用いて意見を言ったり提案したりするのに、教育の話になるとデータではなく経験の話が出てくる、とのことでした。

 

 私自身が当時もやもやしていたこと

学校現場は何年も経験を積んできた先輩の先生方から大学卒業してすぐの先生方まで幅広い年代で構成されています。良くも悪くも様々なことが経験とそこから導き出される「〜だろう」で決められることが多いです。例えばある子どもが友達とけんかをしたとき、お互いの言い分を聞き、なぜそのようなことになってしまったのか、どうすれば止めることができたのか、などを考えさせます。先輩の先生方は子どもに話させる場面、諭す場面などでの接し方がやはり上手です。またその場では形式上仲直りしますが大切なのはその後ですので、その部分の見取りもしっかりしています。こういったことは経験の良い面だと思います。

一方、ブラック校則という言葉が出てきてしまっているように、髪の毛の色のこと、服装のこと、シャープペンの是非、など時代に合わないものをわりと頑なに守り続けていることがあります。「服装の乱れは心の乱れ」というのが経験からくる理由です。これについては納得できるところもある反面、すべてがそうではないだろうとも思います。経験からくる予想で決めてしまうところがありますが、このようなところでも科学的根拠があれば説明しやすいのにと思っていました。

 

講演の中では、「なぜ勉強ができるだけでは活躍できないのか」、「スポーツの経験は将来の収入を高める」、「リーダーシップを発揮した経験は将来の収入を高める」「音楽や美術は子どもたちの認知能力と非認知能力を育てる」などのことについて研究をもとにしながら話してくださいました。大人になってからの収入とその人が子どもだったときに受けた教育の関係を話してくれることがとても興味深い視点でした。

 

一度読んだだけで内容を忘れてしまっている「学力の経済学」を講演会のメモと合わせながらもう一度読み直そうと思いました。